名古屋ITS・交通シミュレーションの現況再現性検証
本郷地区ベンチマークデータセット

1. データセットの概要

1.1. データセット整備の目的

 このデータセットは、信号制御アルゴリズム高度化の研究において、新たに開発する制御アルゴリズムの効果を、交通流シミュレーション上での仮想社会実験で評価するため、現実の交通状況を調査した結果を整理したものである。

1.2. 対象エリア

 調査に際しては、名古屋市の名古屋-長久手線・本郷交差点付近のエリア(図1)を対象とした。このエリアでは、現状ではとくに従道路である南北方向の渋滞が激しく、相対的に名古屋-長久手線が優遇されており、新たな考え方に基づく信号制御方式の有効性を示すのに適している、というのが選定理由である。

図1:調査対象エリアの名古屋-長久手線・本郷交差点付近(拡大地図イメージはこちら)

1.3. 調査日時

調査は次の日時に実施された。
 調 査 日: 平成13年11月19日(月)
 調査時間帯: 朝ピーク3時間(6:30~9:30)、および夕方ピーク3時間(16:30~19:30)

1.4. ベンチマークデータセットの帰属

 調査は東京大学生産技術研究所が実施した。このため、本データセットに含まれるデータのうち、以下のものの著作権は東京大学生産技術研究所に帰属する。

信号制御パラメータ履歴データは、警察庁ならびに愛知県警の協力を得て作成したものであり、著作権も警察庁と愛知県警に帰属する。
 シミュレーションに必要となるOD交通量データは、制御アルゴリズム評価を実施する(株)アイ・トランスポート・ラボが、原データを加工して作成した。このため、OD交通量データは(株)アイ・トランスポート・ラボに帰属する。

2.交差点の方向別通過交通量

 各交差点の方向別通過交通量データは、アーカイブを解凍するとできる「交差点観測交通量」のフォルダ内にある。ファイル名は、それぞれ交差点と流入方向を意味している。すなわち↓のような名称規則となっている。

ファイル名:= [交差点名]交通量データ[方向].dat

 具体的なファイル名と観測地点との対応は、図2~図8に示すとおりである。シミュレーション範囲内にある小規模な交差点の通過交通量データはない。
 フォーマットは、スペースで整形されたASCIIテキストとなっている。各カラムの意味は、ヘッダ行に示されているので、ここでは説明しない。交通量は15分ごとに集計されたものと、信号サイクルごとに集計されたものがあり、それぞれ別のディレクトリに格納されている。集計は、左折・直進・右折(Left Turn・Straight・Right Turn)の方向別、およびトラック・バス・乗用車(Truck・Bus・Pax)の車種別になっている。

図2:明徳池東交差点
図4:上社2交差点
図6:本郷交差点
図8:社が丘交差点

図3:石が根交差点
図5:本郷2交差点
図7:社が丘3交差点

 なお、各観測地点の状況がわかるよう、写真を撮影している。こちらも参照されたい。 → 調査地点撮影

3. ナンバープレート調査データ

ナンバープレート調査の結果は、アーカイブを解凍してできる「ナンバープレート読みとり」フォルダにMS-Excelファイル形式で格納されている。ファイルは観測断面ごとになっており、さらに朝ピークと夕ピークで別れている。ファイル名称付け規則は次の通り。

ファイル名 := [交差点名]NP[開始時刻]~[終了時刻].xls

 ナンバープレート読みとり調査断面の位置を図10および図11に示す。
 フォーマットは図 9に示すとおり、各車両の通過時分秒と進行方向、および4桁のナンバープレート番号が1行のレコードとなっている。ナンバープレートが読みとれなかった場合は、セルを「****」で埋めている。乗用車以外は、備考欄に車種を記入した。
 なおプライバシー保護のため、乗用車のナンバープレート番号は実際のものではなく、スクランブル後のものとなっている。

図 9:ナンバープレート読みとり調査データのフォーマット

また、読みとったナンバープレートを、図10および図11の区間で照合し、旅行時間変動を得たものを「ナンバープレート照合」フォルダに格納した。ファイル名はそれぞれ↓の通りである。

i) TT明徳池東-本郷北.xls … ナンバープレート調査(北)の照合結果
ii) TT杜ヶ丘-本郷南.xls  … ナンバープレート調査(南)区間の照合結果

 照合結果は交差点の進行方向ごとにシートに分けられている。フォーマットは左カラムから順に、

① 車両ナンバー
② 時
③ 分
④ 秒
⑤ 時+分/60+秒/3600
⑥ 旅行時間
⑦ 進行方向 (1…左折、2…直進、3…右折)

となっている。各レコードの時分秒は、下流側調査地点の通過時刻である。

図 10:ナンバープレート調査(北)

図 11:ナンバープレート調査(南)

4. 信号制御パラメータ履歴

アーカイブを解凍すると、”HongoSignal” というフォルダの下に、日付が付されたフォルダ(ITS20011011 ITS20011018)があり、さらにその下に時間帯のフォルダ(6h、8h~18h、20h)がある。各時間帯のフォルダ内のファイルで、対象区間の信号制御のデータが含まれるものは、次の通り。

i) 3.csv … 本郷交差点・石が根交差点
ii) 4.csv … 上社2交差点・本郷南交差点
iii) 5.csv … 社が丘3交差点・社が丘交差点
iv) 6.csv … 明徳池東交差点・楽陶館前交差点

 なお、各CSVファイルのフォーマットは、愛知県警の信号管理台帳の形式にしたがったものとなっており、不慣れな人にとっては意味を把握しづらいのが実状である。正規のフォーマット解説書が入手できなかったため、信号制御に明るいメーカーの担当者に、数値の意味についてヒアリングした一連のやりとりをFAQテキストファイルとして、HongoSignalディレクトリに納めてあるので、そちらを参照されたい。

5. 歩行者交通量調査

 各交差点の歩行者交通量を、方向別にカウントし、サイクルごとに集計したデータ。

図 12:歩行者交通量調査データのフォーマット
6. シミュレーション用OD交通量

 各断面の通過交通量から、シミュレーション用のOD交通量を図13のネットワーク上で作成した。このネットワークは経路選択の余地がない形状なので、上流からの交通量を、通過する各交差点での右左折直進分岐率で配分していけば、整合のとれたOD交通量を一意に作成できる。ただし、あくまでも交通量が見かけ上整合がとれているだけで、真のOD交通量ではないことに留意されたい。

図 13:OD交通量設定用ネットワークデータ

 なお、図 13の端点ノード#6、#7、#8、#9については、その直近交差点での調査がなされていないので、今回は発生集中交通量を設定していない。

7.信号機運用台帳

シミュレーション区間内の信号機運用台帳のアーカイブ。解凍するとファイル名が信号交差点のjpgファイルになる。
 運用台帳には

  • 信号種別
  • 交差点図
  • 現示階梯とその設定値
  • 工事履歴・設定変更履歴

 などが記載されている。

図14:信号機運用台帳サンプル